三井化学 | 量子アニーリング技術を使い化合物探索等の応用実証研究

三井化学株式会社(本社:東京都港区、社長 橋本 修)と共同で、材料探索を加速化する量子アニーリングの応用に関し、化合物探索や組成配合最適化といった具体的な事例について応用実証研究を開始しました。

Sigma-i Mate : 三井化学株式会社

通常、製品開発の場面では、最適な開発品を生み出すために試作と評価を繰り返す必要があり、時間もコストもかかっています。

三井化学とシグマアイは、活用できるデータが少ない状況でもより少ない回数で希望する候補材料を選定する方法として、量子アニーリングを用いたブラックボックス最適化技術(図1)に注目しました。


図1

実験的手法や計算科学的手法、データ科学的手法といった製品開発の様々な手法において、分析と候補決定の間に、量子アニーリングを用いたブラックボックス最適化技術を組み込むことで(図2)、選定される候補の精度が上がり、従来より、最適解を得るまでの時間もコストも削減可能になります。 

本検討により広く化学分野のDX浸透が期待されるとともに、三井化学の更なる製品開発力、市場提案力の向上を目指します。

図2

量子アニーリングを用いたブラックボックス最適化技術とは

物性評価のように実験・測定しないとわからない評価値(ブラックボックス)を所望の値に近づけるための手法がブラックボックス最適化技術です。

量子アニーリングマシンは量子の力を用いて主に組合せ最適化(離散最適化)問題を解くことのできる専用計算機であり、本取組で用いられるブラックボックス最適化技術の計算ボトルネック部分を高速化することが期待されています。

本技術は、材料探索に限らず、さまざまな探索・最適化に用いることが期待されます。

担当者から

このプロジェクトは、樹脂製品を作るときにどんな材料をどれぐらいの割合で混ぜると良いかという材料配合探索ツールを作って、化学製品の開発速度を加速させる目的で、3ヶ年計画の共同開発プロジェクトがコロナ禍の真っ只中に立ち上がりました。

ですが、私自身、化学の知識も量子アニーリングの知識もなく暗中模索の状態で開始したプロジェクトでしたが、メンバーにも助けられながらようやく最終の3年目を迎えることができました。また、自分たちが出来ることや目標が決まっている一般的なシステム開発案件と違って、「やってみないと分からない」が前提の本プロジェクトは、自分にとって勝手が違いすぎて上手にプロジェクトを牽引できずにメンバーを不安にさせてしまうことも多々あったと思います。

1年目、2年目は顧客から題材になるデータセットを提供してもらって、そこから制約条件などを組み込んだ最適化アルゴリズムを開発〜検証しての繰り返しでしたが、2年目の後半からは良い検証結果が出るアルゴリズムを開発できたこともあり、3ヶ年計画の最終年度である今年度はいよいよツール化の目処も立ってきました。

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